脱プラスチックで世界初の「紙カミソリ」〜貝印株式会社〜
世界的にプラスチックのゴミが問題となる中、使い捨てカミソリ国内シェアNo.1の老舗刃物メーカーの貝印株式会社は、世界初となる「紙カミソリ」を開発した。
「紙カミソリ」は、ハンドルに紙、ヘッド全体を含む刃体に金属を使用することでプラスチックの削減を目指した。プラスチック素材が使われているのはごくわずかの部分で、従来品比で約98%削減している。
今回は、その取り組みに迫る。
開発背景
貝印株式会社は、1908年に刃物の町・岐阜県関市にて創業。
約1万点におよぶ商品を展開し、使い捨てカミソリ国内シェアNO.1となり、世界初の三枚刃カミソリなども生み出してきた。
SDGs(持続可能な開発目標)達成 に向けた社会機運が高まる中、貝印株式会社としても脱プラスチックの取り組みが必要と判断し、総合刃物メーカーとして長年培った知見を活かしたプロジェクトとしてスタートした。
部門横断で集結し た東京・岐阜の社員有志5名が、エコの観点や「いつでも清潔で快適」を提供する“1Day カミソリ”という観点から 紙素材に着目し、世界初の「紙カミソリ」を商品化することに成功した。
開発における課題
開発における課題は、耐水性と強度だった。
髭を剃る際には水やお湯と共に使用するため、紙の選定にあたっては、紙スプーンや牛乳パックを参考にしながら多くの紙を試した。
また、組み立て式にすることになっていたため、紙の強度も重要だった。
強度と組み立ての簡単さのバランスをとるのが非常に難しかったそうだ。
そして、単にプラスチックを紙に置き換えるのではなく、プラスチック製のカミソリと遜色ないハンドルの持ちやすさや、切れ味にこだわっている。
紙の選定にはじまり、形状を決めるための試作は100個近くかけ、企画から製品化まで要した期間はなんと約2年とのことだ。
組み立て式
組み立て式の採用には、持ち運びやすさに加えて、折るという体験の提供もある。
外国人にも人気が出そうなアイデアだ。
1回使い切りなので、腐敗やサビの心配がなく、いつでも清潔で快適に使用できる。
折り紙のように、一枚の紙を組み立てて使う約3mmの薄型の本体は、重さ約4gと軽量だ。
紙カミソリの組み立て方
デザイン面では、パッと見て“紙”と分かるクラフト色、表面には発色の良いカラーをプリント。
性別も年齢も限定しない、いつでもどこでも使える、ニュートラルな見た目と使い心地を意識したそうだ。
パッケージも脱プラスチックを意識して、紙製で統一している。
SDGsの取り組みについて
国連の掲げる持続可能な開発目標であるSDGsは、様々なところで目にする機会も増えてきたのではないだろうか。
しかし、その多くはお題目として掲げられているだけで、実際問題として具体的な実になっているケースとしては非常に少ないと感じている。
同社の取り組みは、2年の開発期間をかけて、地道に取り組んだ結果が実を結んでいる貴重なものだ。
個人が、企業が、毎日一つ一つの選択をし、現在の世界は成り立っている。その意味で、新しい選択肢を提供した同社の取り組みには大きな意味を感じる。