フードロス、地域課題を事業で解決〜ばんざい東あわじ〜
2021年1月、突然事件は起こった。
大阪は東淀川区東淡路のショッピングタウン、エバーレ内にあったスーパーが閉店してしまったのだ。
困ったのは、その上階に住む約1,400世帯のマンションの住人たちだ。
エレベーター1本で降りて来ることができ、食材をはじめお手頃価格で美味しい惣菜を購入することができていた。
マンション住人の高齢化も進んでいたため、遠方まで買いに行くことが難しい世帯や、単身になってしまっている世帯の食を支える台所の役割を担ってもいたのだ。
また、その買い物が外出するきっかけになって運動になったり、ご近所とのコミュニケーションの機会になっていたりもした。
都会にあって買物難民となってしまうと言っても過言ではない状況になっていた。
そこで立ち上がったのが、ショッピングタウン エバーレに事務所を構える株式会社Snailtrackの本川代表たち。
同社の掲げる理念が、「東淀川の地域課題を解決することだけを事業化していく」としており、これまでにも地域に役立つサービスを展開してきた。
今回の一件で同社が立ち上げたサービスが「ばんざい東あわじ」である。
「ばんざい東あわじ」での主な目的は下記である。
・東淡路の買物難民(特に食事)を救う
・上階や近隣の住民が家から出て運動やコミュニケートできる
・コロナが原因も含め「食が安定していない」人たちに無料でご飯を提供できる仕組み
・「子どもの貧困問題」と同時に取り組みたいと考えていた「フードロス問題」
結果として具体的には、1g1円でお惣菜(おばんざい)が提供されることになった。
地域の人たちが買いすぎた食材や消費期限が近い物を持ち寄り、足りない分は地域の農家や商店で材料を購入している。
「循環型地域食堂」であり、「地域版フードドライブ」を実現している。
こちらが、「親切な冷蔵庫」。
閉店するスーパーから寄贈された物である。
この冷蔵庫に買い過ぎた食材や賞味期限が近い食材、食べきれないお歳暮・お中元などを地域住民が入れることができ、おばんざいの材料として使われる。
誰でも好きに持っていって構わないという点も面白い。
親切な冷蔵庫のルールがこちら。
「ばんざい東あわじ」の実際の風景がこちら。
食堂では毎日10種類以上の「おばんざい」が大皿で並べられ、台湾の食堂を参考に、1つの器にごはんをよそってその上におかずを乗せていくスタイル。
なんと、これだけ食べれて312円。
調理やレジは地域のまだまだ元気な前期高齢者やボランティア募集サイトを見て駆けつけてくれた学生さん、併設の学習塾の生徒らがボランティアで参加している。
料理はもちろん全て温かみのある手作りだ。
こういったボランティアや、地域の飲食店などとも食材の共有・フードロスの協力体制を構築している点も見逃せない。
日本の食品ロスは、年間約600万トン。
これは、なんと世界で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量約420万トンを上回るとんでもない量だ。
もちろん食べ残しもあるが、買いすぎで賞味期限が切れてしまったことが原因となることも多い。
フードロスは個人で気を付けることは重要だが、親切な冷蔵庫のような地域のコミュニティの受け皿があると、選択肢を増やすことができる。
また、今後の社会課題として、都会の高齢者が買物難民になっていくということは以前から囁かれてきた。
それが現実となった時に、ばんざい東あわじのように具体的な行動で解決していく試みは非常に重要で日本全体で参考になる取り組みである。